今回は、モバイルAR市場に焦点を当てた最新の調査結果をご紹介します。
モバイルARは、空間コンピューティングの主要な分野の一つです。ヘッドセット型ARやVRと技術的な基盤を共有しつつも、それぞれ異なる市場動向に影響を受けています。
ARInsiderの調査部門であるARtillery Intelligenceの調査によると、グローバルなモバイルAR市場の売上高は、2023年の105億ドルから2028年には215億ドルに拡大すると予測されています。
これは年平均成長率(CAGR)15.4%に相当し、消費者向けおよび企業向けの支出が含まれています。
今回は、消費者支出に焦点を当てて詳しく見ていきましょう。
消費者のAR支出:デジタル商品とリアル商品
消費者向けARは、ユーザーが直接支払うモバイルARアプリや体験を指します。
なお、企業がAR開発に使用するソフトウェア(B2B2C)は含まれません。
消費者のAR支出は、デジタル商品とリアル商品に分類されます。
- デジタル商品:
ゲーム、アプリ、アプリ内課金(IAP) - リアル商品:
AR可視化やトライオンを通じて購入に影響を受けた実際の製品
デジタル商品の支出動向
ARデジタル商品の支出は、2023年に10.1億ドル、2028年には13億ドルに達すると予測されています。
この市場の97%をアプリ内課金が占めており、その大部分は「ポケモンGO」によるものです。
しかし、消費者のAR支出は全体的にまだ低水準にとどまっています。
その理由としては以下が挙げられます。
- AR技術がまだ発展途上であること
- 消費者が無料体験に慣れていること
- 多くのAR体験がブランドスポンサーによる提供であること
リアル商品の支出予測
AR影響下でのリアル商品支出は、2023年の689億ドルから2028年には1,555億ドルへと急成長すると予測されています。
この成長の背景には以下の要因が考えられています。
- 小さな市場規模からのスタート(数学的に高い成長率)
- 現在の勢いと急速な採用傾向
- カメラネイティブ世代(Z世代)の購買力の増大
しかし、2028年の予測1,555億ドルという数字は、グローバルな消費者支出63兆ドルのわずか0.3%に過ぎません。
つまり、AR活用のショッピングにはまだ大きな成長の余地があるのです。
ARショッピングの形式と製品カテゴリー
ARショッピングの主要な形式としては、以下が挙げられます。
- ビジュアル検索
- ソーシャルレンズ
- Web AR
製品カテゴリーでは、以下の順で人気があります。
- 化粧品
- 衣類
- ジュエリー
- 家具
- 家電製品
まとめ
モバイルAR市場は急速に成長しており、特にリアル商品の購入への影響力が注目されています。
しかし、まだ全体的な消費に占める割合は小さく、今後さらなる成長が期待されます。
企業は、AR技術を活用した製品体験の提供や、ビジュアル検索、ソーシャルレンズなどの手法を通じて、消費者とのより深い関係性を構築できる可能性があります。
今後も、AR技術の進化と消費者の受容度の変化に注目しながら、市場の動向を見守っていく必要があるでしょう。